日本ソノケミストリー学会(旧称:ソノケミストリー研究会)

 2020年度より日本ソノケミストリー学会の会長を拝命しました、榎本でございます。諸先輩方が築き上げられたこの歴史の重みを改めて痛感し身が引き締まる思いです。


 2019年初冬より始まった新型コロナウィルス感染の世界的拡大により、この年の春季学会、卒業式・入学式・入社式等の対面行事はほぼすべて中止となりました。明けての2020年4月からはリモートワーク、遠隔講義など、かつて経験のない新しい生活様式を余儀なくされることとなり、本学会員である大学等教員・学生の皆さま、国研・企業の技術研究者の皆さまにおかれましても大変な戸惑いとご苦労をされたことと拝察申し上げます。


 本学会の定例行事であるソノケミストリー討論会(第29回)もオンライン開催となりました。対面実施に至らなかったことは残念でしたが、オンラインも悪いことばかりではなかったように思います。すなわち、出張手続き・移動時間ゼロ、会場準備ほぼゼロ、発表資料の見やすさ、新規参加者の増加など、メリットもそれなりにあったのではないでしょうか。もちろん、一日も早くこのパンデミックが終息して「元の生活」に戻れることが望まれますが、すべて完全に「元通り/旧態然」にするのではなく、活かせるものはうまく活かして学会活動をより有意義かつ効率的に振興できるような変革を考えることも大切かと考えています。特に学会運営にあたっては一極集中しがちな業務負担を避けるべく、業務内容の見直し、分散化を考えていきたいと思います。


 Ultrasonics Sonochemistry誌のインパクトファクター(2019-2020)は7.630と右肩上がりで、ソノケミストリーに対する世界的関心が高いことは喜ばしいことですが、同誌は2021年から”GOLD” open accessに変貌することが出版元のElsevierよりアナウンスされました。GOLDとは投稿料が金塊並みに跳ね上がることを意味しているようで、出版業界も何らかの変革が必然なのかもしれません。本学会員の投稿に対して一定のdiscountも検討されておりますので、学会員としてのメリットが多少でも出せることが正式に確定次第、HPでアナウンスいたします。


 本学会の会員であることの大きなメリットは「絆」であると考えます。


 1992年の発足以来、常にone-pot会場で討論がなされてきました。ソノケミストリーというキーワードで繋がった学際色の強い集まりにおいて適度な距離感がよい「絆」に繋がったのかもしれません。当時学生だった方がその分野を継続して牽引・発展させて新たな「絆」を引き継がれています。発表件数が増えて、第11回(2002@産総研中部センター)からはポスターセッションが導入され「2日目の朝」という独特のプログラム設定が通例となりました。普通「2日目の朝」といえば前日の懇親会+n次会(n=2, 3, 4, …)に由来する諸々の障壁が想定されがちですが、そんな壁は一切なく、朝から熱い討論が交わされます。本学会のポスターセッションほど熱いものはないと思っており、これも本学会の「絆」にほかなりません。


 Google検索で”chemical society”を探すと、559,000,000件がヒットし、その中にはおなじみの日本化学会、JACSのほか、Saudi, Iranian, Korean, European, Chilean, ….など、世界各国に“化学者”の集まりが存在します。比べて、”sonochemical society”でググるとそのヒット数は526,000件と3桁下がりますが、出てくるSocietyは、Europe (ESS), Asia-Ocean (AOSS), そしてJapan (JSS)の3つしかありません。一つの国内でdomesticなannual meetingを開催できているのは我らがJSSだけであることを自負し、この独特な「絆」をもつsocietyを持続・発展させていく所存です。皆さまからのご協力・ご指導をお願い申し上げます。  

 2020年10月

 
日本ソノケミストリー学会会長
榎本 尚也

日本ソノケミストリー学会会長
榎本 尚也
(有明工業高等専門学校・創造工学科)